
職業紹介の労働条件明示、書面テンプレートと18項目一覧【2026年版】
職業紹介事業者が求職者に交付する労働条件等明示書には、2024年4月改正で追加された4項目を含む合計18項目の明示事項を、求人受理時と職業紹介時の2段階で書面またはメール等の方法により明示する必要があります。
「求人票さえ整えれば十分」と考えがちですが、求人票と労働条件等明示書は記載すべき項目も交付するタイミングも異なります。明示が不十分だと、入社後の「聞いていた条件と違う」というトラブルや、労働局の指導対象になりかねません。
本記事は、職業安定法・同施行規則に基づく職業紹介特有の明示事項に絞り、18項目の一覧・書式サンプル・記載ミスの是正例までを整理します。改正の経緯や施行タイムラインは2024年職業安定法改正のポイントで、求職管理簿への記録・保存実務は法定帳簿の作り方で個別に解説しているため、本記事では重複を避け明示書そのものの実務に集中します。
結論:職業紹介の労働条件明示、書面テンプレートの要点(早見表)
労働条件等明示書とは、職業紹介事業者が求職者に求人を紹介する際、その求人の労働条件を法定の明示事項に沿って書面等で正確に伝えるための文書です。
| 論点 | 要点 |
|---|---|
| 明示事項の数 | 全18項目(2024年4月改正で追加項目あり) |
| 明示のタイミング | 求人・求職の受理時と、実際に紹介する時の2段階 |
| 明示の方法 | 書面の交付が原則。求職者が希望した場合に限りメール・SNS等の電子的方法も可 |
| 根拠法令 | 職業安定法第5条の3・同施行規則第4条の2 |
| 求人票との違い | 求人票=募集の入口表示/明示書=紹介時に交付する確定的な労働条件 |
| 最頻トラブル | 求人票と明示書の記載内容の不一致(実務相談の知見) |
求人受理時の求人案件シート記載項目テンプレ(求人票・明示書の元データ)
求人案件シートとは、求人者から求人を受理する時点で聞き取った内容を一覧化した社内テンプレで、求人票と労働条件等明示書の共通の元データになります。決まった様式はなく所定の様式で構いませんが、載せる労働条件は職業安定法第5条の3・同施行規則第4条の2の明示事項と連動させます。
シートの項目は、明示書へそのまま転記する「労働条件系」と、シート固有の「案件管理系」に分けて設計すると転記漏れが防げます。労働条件系は本記事「職業紹介事業者が明示すべき労働条件18項目」をそのまま欄立てにし、案件管理系は次の項目を加えます。
| 区分 | 記載項目 | 目的 |
|---|---|---|
| 求人者情報 | 求人者名・所在地・採用担当者名・連絡先 | 照会・紹介の窓口を確定 |
| 募集条件 | 募集人数・採用予定時期・選考フロー | 案件の進捗管理 |
| 受理管理 | 求人受理日・求人の有効期間・公開/非公開の別 | 求人受付簿との連動 |
| 取引条件 | 紹介手数料の取り決め(上限制は就職後6ヶ月支払賃金の11.0%、免税事業者は10.3%) | 請求・上限管理 |
案件管理系は労働条件等明示書には載りませんが、求人受付簿や法定帳簿の作り方で扱う記録と一体で管理すると、受理から紹介までの履歴が追えます。求人受理時に埋める記載項目チェックリストを用意しておくと、聞き取り漏れを入口で防げます。
職業紹介事業者が明示すべき労働条件18項目

明示事項は「基本項目」「2024年4月改正の追加項目」「職業紹介特有の項目」の3グループに整理すると漏れなく確認できます。以下、通し番号で18項目を示します。
労働基準法ベースの基本明示事項
雇用契約全般に共通する基本項目です。求人票の記載範囲とも重なりますが、明示書では省略できません。
| # | 明示事項 |
|---|---|
| 1 | 従事すべき業務の内容 |
| 2 | 労働契約の期間(有期/無期の別) |
| 3 | 試用期間の有無と期間 |
| 4 | 就業の場所 |
| 5 | 始業・終業の時刻、所定時間外労働の有無 |
| 6 | 休憩時間・休日・休暇 |
| 7 | 賃金の額・締日・支払方法 |
| 8 | 退職に関する事項(解雇事由を含む) |
| 9 | 加入保険(社会保険・労働保険) |
| 10 | 昇給に関する事項 |
| 11 | 受動喫煙防止措置の状況 |
2024年4月改正で追加された4項目
2024年4月の改正で、変更の範囲や有期契約に関する明示が追加されました。改正の背景と施行時期は2024年職業安定法改正のポイントで詳述しているため、ここでは項目の要点のみ示します。
| # | 明示事項 | 補足 |
|---|---|---|
| 12 | 就業場所・従事すべき業務の変更の範囲 | 将来の配置転換の可能性まで明示 |
| 13 | 有期労働契約の更新上限 | 通算契約期間または更新回数の上限の有無と内容 |
| 14 | 無期転換申込機会 | 主に契約締結・更新時に明示する項目 |
| 15 | 無期転換後の労働条件 | 主に契約締結・更新時に明示する項目 |
14・15は求職者が有期労働契約で就労し無期転換ルールの対象となる場合の項目で、実際の明示は労働契約の締結・更新の局面で行われます。紹介段階では12・13が特に関係します。
職業紹介特有の明示事項(求人票との相違点)
職業紹介では、紹介事業者と実際の雇用主が別であるため、誰に雇用されるのかを明確にする項目が重要になります。
| # | 明示事項 | 求人票との違い |
|---|---|---|
| 16 | 求人者(実際の雇用主)の氏名または名称 | 紹介時点で雇用主を確定的に明示 |
| 17 | 派遣労働者として雇用しようとする場合はその旨 | 雇用形態の誤認を防ぐため必須 |
| 18 | 固定残業代を採用する場合はその内容 | 金額・時間数・超過分の扱いまで明示 |
労働条件等明示書の書式サンプル

明示書に決まった様式はありませんが、明示事項を漏れなく並べた自社の所定の様式を用意しておくと運用が安定します。
書面・メール等の明示方法と必須記載順
明示は書面の交付が原則です。求職者が希望した場合に限り、電子メールやSNSのメッセージ機能など、出力して書面を作成できる電子的方法も認められます。口頭のみの明示は認められません。
| 記載順 | ブロック | 主な内容 |
|---|---|---|
| 1 | 事業者情報 | 求人者名、職業紹介事業者名・許可番号 |
| 2 | 業務・就業場所 | 業務内容、就業場所、それぞれの変更の範囲 |
| 3 | 契約期間 | 契約期間、更新の有無、更新上限 |
| 4 | 労働時間 | 始業・終業時刻、時間外労働、休憩・休日 |
| 5 | 賃金 | 賃金額、固定残業代の内容、昇給 |
| 6 | その他 | 保険、退職・解雇事由、受動喫煙防止措置 |
求人票と明示書を分けて作る際の注意点
求人票は募集の入口で見せる表示、明示書は紹介時に交付する確定的な労働条件です。両者を別々の様式・別々のデータで作ると、更新漏れによって記載内容がずれます。同じ求人でも、募集後に条件が固まった項目(勤務地の確定、固定残業代の詳細など)は明示書側で必ず反映させます。
明示すべきタイミングと実務フロー

明示は一度で終わりではなく、募集段階と紹介段階の2回に分けて行うのが原則です。
求人受理時と職業紹介時の2段階明示
| 段階 | タイミング | 明示する内容 |
|---|---|---|
| 第1段階 | 求人・求職の受理時(募集情報等提供時) | 募集段階の労働条件(求人内容)を明示 |
| 第2段階 | 求職者に特定の求人を紹介する時 | 当該求人の確定的な労働条件を書面等で明示 |
第1段階で示した条件と、第2段階で確定する条件が異なる場合は、変更点がわかるように示す配慮が求められます。
明示内容が変更になった場合の再明示ルール
一度明示した後に条件が変わった場合は、変更後の内容を速やかに再明示します。当初の明示条件と変更後の条件を対照できる形で残しておくと、後日の確認がしやすくなります。誰にいつ何を明示したかの記録は、求職管理簿の管理と一体で運用すると抜け漏れが防げます(記録項目は法定帳簿の作り方を参照)。
よくある記載ミスと是正例

明示事項を「書いてはいる」状態でも、内容が曖昧だと明示義務を果たしたことになりません。実務で頻出する是正例を挙げます。
抽象的表現(NG)と具体的表現(OK)の対比
| 項目 | NG(抽象的) | OK(具体的) |
|---|---|---|
| 賃金 | 当社規定による | 月給28万円(固定残業代4万円・25時間分を含む) |
| 就業場所 | 本社ほか | 東京本社(変更の範囲:会社が定める国内事業所) |
| 契約期間 | 応相談 | 期間の定めなし。有期の場合は更新上限を明記 |
| 業務内容 | 一般事務全般 | 受発注データ入力・請求書発行・電話応対 |
求人票と明示書の記載差異トラブル事例
職業紹介事業者からの相談で最も多いのは、「求人票の労働条件と労働条件等明示書の記載内容が一致していない」ことに起因する求職者からの問い合わせ・トラブルです。求人票と明示書をそれぞれ別ファイルで手作業作成している事業者ほど発生しやすく、募集後に固定残業代の内訳や勤務地が変わった際の反映漏れが典型例です。片方だけ直してもう片方が古いまま、という状態がずれの温床になります。
人材HUBは求人票と労働条件等明示書を同一のデータソースから生成する設計です。求人情報を一度登録すれば、募集用の求人票と紹介時の明示書に同じ条件が反映されるため、二重管理による記載差異が構造的に起きにくくなります。
テンプレート運用を仕組み化する方法

明示ミスの多くは、担当者の注意力ではなく運用の作り方に原因があります。個人の頑張りに頼らない仕組みへ寄せることが再発防止の近道です。
Excel・紙運用で起きやすい記載漏れ
| リスク | 起きやすい状況 |
|---|---|
| 追加項目の欄がない | 2024年改正で追加された変更の範囲・更新上限の記載欄が古い様式に無い |
| 版の取り違え | 最新版がどれか分からず、古いテンプレートで交付してしまう |
| 求人票との不一致 | 求人票と明示書を別ファイルで管理し、片方だけ更新される |
| 交付記録が残らない | 誰にいつ明示したかが手元に残らず、後日の確認ができない |
様式を最新の明示事項に合わせて固定し、求人データと明示書を連動させれば、これらの多くは入力段階で防げます。
人材HUBは人材紹介業に特化したCRMで、求人・求職の登録から明示書の作成までを一つの流れで完結できます。法定帳簿の自動生成や事業報告書用データの集計にも対応し、日常業務の延長で記録が整う設計です。
まとめ
職業紹介の労働条件明示は、基本11項目・2024年改正の追加4項目・職業紹介特有3項目の全18項目を、求人受理時と紹介時の2段階で書面等により行うのが原則です。トラブルの起点は求人票と明示書の記載差異であり、両者を同じデータから作る仕組みにすることが最も確実な対策になります。許可取得後の体制づくりについては人材紹介会社の開業ガイドもあわせてご確認ください。
求人票と明示書を一元管理する
人材HUBは人材紹介業に特化したCRMです。求人票と労働条件等明示書を同一データから生成し、法定帳簿の自動生成や事業報告書の集計まで、明示ミスの起きにくい運用を支援します。
料金・機能の詳細や無料での製品体験については、お問い合わせからご案内しています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 労働条件明示は口頭でもよいか
書面の交付が原則で、口頭のみの明示は認められません。求職者が希望した場合に限り、電子メールやSNSのメッセージ機能など、出力して書面を作成できる電子的方法が認められます(職業安定法施行規則第4条の2)。FAXも書面を作成できるため利用可能ですが、確実に到達し保存できる方法を選ぶのが安全です。
Q2. 求人票と明示書、どちらを優先すべきか
労働条件は最終的に締結される労働契約が基準であり、求人票はあくまで募集段階の表示です。紹介時に交付する労働条件等明示書、そして雇用契約書(労働条件通知書)の内容が優先されます。ただし食い違い自体がトラブルの原因になるため、求人票と明示書は一致させる運用が前提です。
Q3. 明示事項18項目はすべて書面化が必須か
明示事項は原則すべて明示が必要です。該当がない項目(例えば無期契約なら更新上限は不要)は、空欄のままにせず「なし」「該当なし」と明記します。曖昧な空欄は「明示していない」と判断されうるため避けてください(職業安定法第5条の3・同施行規則第4条の2)。
Q4. 明示書のテンプレートはどこで入手できるか
厚生労働省がモデル様式・記載例を公開しているほか、管轄の労働局窓口でも入手できます。自作する場合は、2024年改正で追加された変更の範囲・更新上限の記載欄が抜けやすい点に注意が必要です。求人票と明示書を同じデータから生成できる専用システムを使えば、様式更新と記載差異の両方を同時に防げます。
Q5. 求人票と労働条件等明示書は同じテンプレートでよいか
用途が異なるため様式は別にしますが、元データは一本化するのが安全です。求人受理時の求人案件シートに労働条件と案件管理項目をまとめて記録し、そこから求人票と明示書を生成すると、二重入力による記載差異を防げます。
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