労働者派遣と職業紹介を兼業する二重許可ガイド|責任者兼任・事業所兼用・帳簿の別建て【2026年版】
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労働者派遣と職業紹介を兼業する二重許可ガイド|責任者兼任・事業所兼用・帳簿の別建て【2026年版】

2026年8月7日26分で読める

労働者派遣と職業紹介は、それぞれの許可を取得すれば同一法人・同一事業所で兼業でき、事務所やシステムを兼用して運営できるが、派遣元責任者と職業紹介責任者はいずれも選任が必要で帳簿は事業ごとに別建てが必須であり、同一人物が両責任者を兼任できるかは事業所の実態に応じて管轄労働局への確認が要る。まずこの全体像を押さえれば、二重許可の実務判断は大きく前に進みます。

すでに職業紹介事業を営む会社が派遣にも参入する、あるいは派遣事業者が紹介を足す。こうした二事業化は求人・求職ニーズの取りこぼしを減らす有効な一手ですが、「要件・責任者・事業所・帳簿のどこまでを共通化でき、どこは分けるのか」が分かりにくいのが実情です。士業の許可代行サイトは各論がバラバラで、公的PDFは条文ベースのため、既存事業者が一気通貫で判断できる資料が見当たりません。

本記事では、派遣許可と紹介許可の要件差、二重許可の同時取得、責任者の兼任可否、事業所の兼用、帳簿の別建て、そして変更届・事業報告書の二重管理までを、確定した法令数値と早見表で整理します。士業に相談する前の一次判断に使える形にまとめました。

結論:労働者派遣と職業紹介は二重許可で兼業できるが、責任者選任と帳簿は事業ごとに別建てが必須

労働者派遣事業と有料職業紹介事業の兼業とは、二つの許可を別個に取得したうえで同一法人が両事業を並行運営することを指し、事業所やシステムは兼用できても、責任者の選任と法定帳簿は事業ごとに独立させる運用を意味します。

比較軸労働者派遣事業(許可)有料職業紹介事業(許可)
資産要件基準資産2,000万円・現預金1,500万円(各×事業所数)+基準資産が負債総額の1/7以上基準資産500万円(×事業所数)・現預金150万円
責任者派遣元責任者(専属)を選任職業紹介責任者(常勤・常駐)を選任
事業所面積20㎡要件は2017年に廃止・個人情報の適正管理が要件同左(20㎡要件は廃止・適正管理が要件)
帳簿派遣元管理台帳を作成求人・求職・手数料の法定帳簿(保存2年)
主な様式所定の様式で申請・届出許可申請=様式第1号/変更届=様式第6号

現預金要件は派遣が1,500万円、紹介が150万円と桁が10倍違う点が、兼業時の資金設計で最初につまずくポイントです。以下、各論点を実務目線で掘り下げます。

派遣許可と職業紹介許可の違いと二重許可の同時取得

労働者派遣許可と有料職業紹介許可の要件を資産・責任者・事業所の3軸で比較した図
労働者派遣許可と有料職業紹介許可の要件を資産・責任者・事業所の3軸で比較した図

派遣許可と紹介許可の要件比較(資産要件・責任者・事業所)

最大の違いは資産要件です。労働者派遣は、基準資産額2,000万円以上(1事業所あたり、繰延資産・営業権を控除)、現金・預金1,500万円以上、さらに基準資産額が負債総額の7分の1以上という3要件をすべて満たす必要があります(大阪労働局の資産要件資料による)。3要件目の「負債の7分の1」は見落とされやすいので必ず確認してください。

一方、有料職業紹介の資産要件は基準資産額500万円以上(1事業所あたり)と現金・預金150万円以上で、派遣に比べて大幅に軽い水準です。責任者は派遣が派遣元責任者、紹介が職業紹介責任者と別々に選任が必要で、事業所の面積20㎡要件はどちらも2017年に廃止されています。開業全体の費用感は人材紹介会社の開業に必要な費用も参照してください。

二事業を同時取得する場合の申請の流れと窓口

新規で二事業を同時に立ち上げる場合、申請先はいずれも事業所を管轄する都道府県労働局(需給調整事業部門)です。派遣は許可申請と資産要件審査、紹介は許可申請と職業紹介責任者講習の受講証明が必要で、書類は事業ごとに別セットで用意します。

同時取得では、資産要件の重い派遣側を基準に自己資本を設計しておけば、紹介側の要件は自動的に満たせるケースが多いのが実務上のコツです。手続きの全体像は人材紹介業の始め方にまとめています。派遣の中小事業主向けには常時雇用の派遣労働者が一定数以下の場合の暫定的な配慮措置もありますが、恒久要件ではないため、適用可否と最新の金額は管轄労働局で確認してください。

派遣元責任者と職業紹介責任者の兼任は可能か

派遣元責任者と職業紹介責任者の兼任可否と専属性の原則を整理した図
派遣元責任者と職業紹介責任者の兼任可否と専属性の原則を整理した図

兼任可否の結論と専属性の原則

結論として、派遣元責任者と職業紹介責任者を同一人物が兼ねることを明文で禁止する規定は、職業安定法にも労働者派遣法にもありません。ただし派遣元責任者には「専属」という条件があり、他法人の派遣元責任者を兼ねることはできません(東京労働局のよくある質問による)。専属とは「他社と掛け持ちしない」という意味で、同一事業所内での総務・経理など他業務との兼務までは妨げないと運用されています。

職業紹介責任者も常勤・常駐が原則で、他社の役員や他社業務との兼務はできません。つまり両責任者とも「同じ会社・同じ事業所に軸足を置く人」であることが求められます。

同一事業所での兼務が問題になる範囲と管轄労働局への確認

法令上は禁止規定がないとはいえ、1人が両責任者を実際に兼ねられるかは、派遣労働者数や求人・求職の取扱件数といった業務量に照らして管轄労働局が個別に判断する領域です。業務量が過大で責任者としての職責を果たせないと見られれば、選任を認められないこともあります。

人材HUBは、職業紹介の求人・求職・手数料管理と、派遣管理の記録を別々の台帳として扱える設計です。責任者が二事業を横断して確認する場面でも、どちらの記録かが一目で分かり、届出漏れの防止に役立ちます。

したがって「同一事業所で1人兼任」を前提に体制を組む場合は、局によって運用に差があるため、申請前に管轄労働局へ事前確認するのが安全です。責任者そのものの要件は職業紹介責任者の選任要件で詳しく解説しています。

責任者講習は派遣・紹介それぞれの受講が必要

派遣元責任者講習と職業紹介責任者講習は別制度で、両方の責任者を担うなら双方の受講が必要です。職業紹介責任者講習の受講証明の有効期間は5年で、この期間内の受講が選任の前提になります。1人が両方を担う場合でも講習が一本化されることはないため、受講計画は事業ごとに立ててください。

事業所の兼用は認められるか

同一事業所を派遣と職業紹介で兼用する際のレイアウトと個人情報管理の要件を示した図
同一事業所を派遣と職業紹介で兼用する際のレイアウトと個人情報管理の要件を示した図

同一事業所を派遣・紹介で兼用する可否とレイアウト

同一の事業所(物件)で派遣と紹介を同時に運営すること自体は、一般に可能とされています。事務所やシステム、受付といった共用部分を兼ねても差し支えありませんが、いずれの事業でも求職者・登録者の個人情報を適正に管理できる環境であることが要件です。

具体的には、面談スペースで他者に登録情報が見えない配慮や、書類・データへのアクセス制限といった管理体制が問われます。兼用の可否やレイアウトの適否は労働局の実地確認事項になることがあるため、区画の取り方は手引で確認しておくと安心です。

事業所要件の実務(20㎡の面積要件は2017年に廃止)

かつて職業紹介の事業所には20㎡以上という面積要件がありましたが、これは2017年に廃止されました。現在は面積の絶対基準ではなく、個人情報の適正管理とプライバシーに配慮した面談環境が実質的な審査ポイントになっています。

派遣・紹介を兼用する事業所では、面積の基準がなくなった分、共用部分と各事業固有の管理区分をどう設計し、情報を混在させずに運用できるかが実務の肝になります。

帳簿・管理台帳の別建て管理

派遣元管理台帳と職業紹介の法定帳簿を別建てで管理する構成を示した図
派遣元管理台帳と職業紹介の法定帳簿を別建てで管理する構成を示した図

派遣元管理台帳と職業紹介の法定帳簿を分ける理由

事業所やシステムは兼用できても、帳簿は事業ごとに別建てが必須です。派遣では派遣元管理台帳を、職業紹介では求人管理簿・求職管理簿・手数料管理簿といった法定帳簿を、それぞれ独立して整備します。記載事項も根拠法令も異なるため、一つの台帳に混在させると監査・調査で不備を指摘されかねません。

人材HUBの実務でも、二事業を持つ事業者ほど「どちらの記録か」を分けておくことが、後の変更届や事業報告書の作成負荷を下げる決め手になっています。法定帳簿の基本的な記載事項は法定帳簿の作り方を参照してください。

帳簿の様式と保存期間(施行規則第24条の7・保存2年)

職業紹介の法定帳簿は、職業安定法施行規則第24条の7に基づき、所定の様式で作成し保存期間は2年です。手数料管理簿には、上限制手数料の上限である就職後6ヶ月間に支払われた賃金の11.0%(免税事業者は10.3%)といった計算根拠を残せるようにしておきます。

人材HUBは、求人・求職・手数料の記録を法定帳簿の項目に沿って残せるため、保存期間2年の管理や手数料上限の計算根拠の保持を、日々の運用のなかで自然に行えます。

派遣側の派遣元管理台帳も保存が義務づけられており、様式・保存年限は事業ごとに別管理が原則です。

兼業事業者の運用実務:変更届・許可更新・事業報告書

二重許可事業者が管理する変更届・許可証書換・事業報告書の期限と二重提出を整理した図
二重許可事業者が管理する変更届・許可証書換・事業報告書の期限と二重提出を整理した図

変更届・許可証書換の二重管理(30日以内/10日以内)

責任者の交代や事業所の移転などがあった場合、変更届は原則30日以内、許可証の書換を要する変更は10日以内に届け出ます。二重許可の事業者は、この期限管理を派遣・紹介それぞれで走らせる必要があります。

たとえば責任者を一括で交代した場合でも、派遣側と紹介側で別々に届出が必要です。どちらか一方だけ出して片方を失念する事故が起きやすいため、変更事由が発生した時点で「両事業に影響するか」を必ずチェックする運用にしておきましょう。

事業報告書は派遣・紹介それぞれ提出する

事業報告書も派遣・紹介で別々に提出します。有料職業紹介の事業報告書は様式第8号で毎年提出し、派遣は派遣の様式で提出します。集計対象期間・記載項目・提出先の窓口が事業ごとに異なるため、日々の帳簿を事業別に分けておけば、報告時期の集計負担と提出漏れのリスクを下げられます。

まとめ:二重許可運用の要点(同時取得・兼任確認・兼用・帳簿別建て)

労働者派遣と職業紹介の兼業は、二つの許可を別個に取得すれば同一法人・同一事業所で運営でき、事業所やシステムの兼用も可能です。ただし資産要件は派遣が基準資産2,000万円・現預金1,500万円と紹介より重く、派遣元責任者・職業紹介責任者はそれぞれ選任し、帳簿も事業ごとに別建てが必須です。1人が両責任者を兼ねられるかは法令上の禁止規定はないものの、管轄労働局が業務量に応じて個別判断するため事前確認が欠かせません。開業の全体像は人材紹介業の始め方もあわせてご確認ください。


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よくある質問(FAQ)

労働者派遣と職業紹介は同じ会社で両方できますか?

できます。労働者派遣事業と有料職業紹介事業はそれぞれ別の許可制度ですが、両方の許可を取得すれば同一法人で並行して運営できます。事業所やシステムの兼用も可能です。ただし責任者は事業ごとに選任し、帳簿も別建てで整備する必要があります。

派遣元責任者と職業紹介責任者は同じ人が兼任できますか?

法令上、両責任者の兼任を明文で禁止する規定はありません。ただし派遣元責任者は専属で他法人との掛け持ちができず、職業紹介責任者も常勤・常駐が原則です(東京労働局のよくある質問による)。同一事業所で1人が両方を兼ねられるかは業務量に応じて管轄労働局が個別に判断するため、体制を組む前に事前確認してください。

派遣と職業紹介で事業所を兼用できますか?

同一の事業所で派遣と紹介を兼用すること自体は可能とされています。事務所や受付を共用しても差し支えありませんが、いずれの事業でも求職者・登録者の個人情報を適正に管理できる環境が要件です。なお職業紹介の20㎡以上という面積要件は2017年に廃止されています。区画の取り方は手引や管轄労働局で確認してください。

派遣と職業紹介の帳簿は分けて作成する必要がありますか?

分けて作成する必要があります。派遣は派遣元管理台帳、職業紹介は求人・求職・手数料の法定帳簿と、根拠法令も記載事項も異なります。職業紹介の法定帳簿は職業安定法施行規則第24条の7に基づき所定の様式で作成し、保存期間は2年です。一つの台帳に混在させると監査で不備を指摘されるおそれがあります。

派遣と職業紹介、資産要件はどちらが厳しいですか?

労働者派遣のほうが厳しい水準です。派遣は基準資産額2,000万円・現金預金1,500万円(各1事業所あたり)に加え、基準資産が負債総額の7分の1以上という3要件を満たす必要があります。一方、有料職業紹介は基準資産額500万円・現金預金150万円です。同時取得では派遣側を基準に自己資本を設計しておくと、紹介側の要件も満たしやすくなります。

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